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欲求の五段階説



  衣食足りて、恋人を求める


 アフリカの大学紹介のテレビ番組を見た小学生の女の子が、 「なぜアフリカに大学なんかつくるの、大学をつくるお金があったら食べ物を買えばいいのに」 と腹を立てていました。アフリカの飢餓状態を知り、難民の、特にお腹の空いた子供にいたく同情し、しかも勉強嫌いのその子は、アフリカの国々は何を 考えているのだろうといいたげです。しかし、たしかに難民一人一人にとっては、大学よりも、今日の一片のパンが欲しいのは事実でしょう。

 私達の欲求段階の第一段階は生きるためにパンを望み、パンを求めて生きているのです。 マズローという人格心理学者は、人間の欲求には五つの段階がある、としています。 そして、人はその欲求の段階を、より基本的なものから満たしていき、順次、より高い欲求で 生きていく、という欲求の階層説を唱えています。人は、自分の人生において、欲求の五つの段階を 順番に上にのぼっていく、と考えていただければいいと思います。ここでは、この欲求階層説について簡単に 説明していきます。

 
 第一段目は、まず生命の維持のための生理的欲求の段階です。おぼれかかったとき、名誉も 何もないでしょう。おぼれたときはまさにワラでも何でもつかみ、大声で叫び、助けを求めます。 これは呼吸欲求、空気、酸素への欲求です。 そして、のどのかわきによる水分への飲水欲求、空腹感による食物欲求と続きます。 この第一段目をのぼると、第二段目は、安全欲求の段階となります。第一段目では、 ほっといては生命の維持ができないのだから身の安全など考えず、たとえ、危険でも、水のため、食べ物の ために行動します。もちろん、なりふりかまわずの行動です。 しかし、一応、お腹に入るものが確保されることがわかりますと、もう危険はおかしません。 「命あってのものだね」という安全重視の欲求となります。何百キロと危険をおかして砂漠を歩いてきた人たちが、 難民キャンプに入ると、もう動き出さないのはこのためです。 そこでは、最低限だが、食料と安全が保証されているからです。
さて、生理的欲求と安全欲求が満たされると、第二段目は終わり、第三段目の欲求階段をのぼることになるわけです。 ここで、人ははじめて、生命の維持と安全にきゅうきゅうすることから脱却し、社会生活や人間と人間の関係に関心 が生まれるのです。そして、第三段目として、人から好かれたい、集団に所属したいという欲求にもとづき行動することになります。 そしてそれが満たされると尊敬の欲求が中心となっていきます。

 マズローは、この第四段目までの欲求は全て欠乏を充足する欲求だとしています。 そしてこのような欠乏をすべて充足したときにはじめて、人間は、自分自身を成長させる自己実現欲求にもとづいて行動することがでいきると しています。そして、この自己実現欲求にもとづいた生活こそ、人間本来の生き方であるというのです。だから、人は欠乏欲求をすみやかに満たし、 人間としての成長を目指す生活をすべきだとしています。 しかし、なかなか、そう簡単に第三、第四段階はクリアできそうにありません。 私達は、人の好き嫌い、尊敬や軽蔑など人間関係のゴタゴタのなかで、生きているのが現実です。 そして、マズローの説に意義を唱えるわけではないのですが、私はむしろ、この人間関係の中で 人は、人間について学び、自己を成長させていくのではないかと思っています。



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